散歩道<2411>

                        面白い文章(61)・窓・ミネルバのフクロウ、

 力が駄目なら次は知恵の出番か。米国務省が、イラクや国際テロ、中国の軍拡などの問題に取り組むために、米国の頭脳を大動員する計画を発表した。理系の研究にはかねて援助をしているのだが、今回は心理学者、社会学者、歴史家などを対象に5年間に5千万jをつぎ込んで、安全保障の研究をやらせるという、文系の学者をこのように駆り出すのは、60年代のベトナム戦争以来である。
 計画は、ローマ神話の知恵の神ミネルバにちなんでミネルバ・プロジェクトと名づけられた。そういえば、軍事力を重視したラムズヘルド前国防長官たちは、自分たちをローマ神話の火の神うウルカヌスに例えていた。彼らが「世間に印象づけたいと望んでいたパワー、たくましさ、粘り強さ、耐久力などといったイメージを伝えるのにもってこいだった」と米国のベテラン政治記者は解説する
(ジェームス・マン著「ウルカヌスの群像」、共同通信社刊)
 軍事偏重路線が破綻した以上、知恵の神が火の神に取って代るのは、当然の流れとも言える。

 「ミネルバのフクロウは夕暮れに飛び立つ」と描いたのは、哲学者ヘーゲルだった。時代を集約する知恵は、その時代のおわるころにようやく登場するという意味である。知恵を絞れという今回の計画が登場したのも、ブッシュ政権が夕暮れになってから、そう考えるとなかなか味のある命名のようだ。          面白い話候補             

'08.6.30.朝日新聞論説委員質から)