散歩道<991>
天声人語・握手
握手、また握手、もうひとつ握手。民主党の代表選は、小沢一郎氏が菅直人氏を引き離して勝利した。開票の直後のテレビ中継を見てこのふたりや前原*1前代表が何度も握手を繰り返すさまが印象的だった。「以外に聞こえるかもしれないが、握手は相互の不信感から生まれた習慣である」という説がある。「昔の人々は、見知らぬ人間に接するとき、いつでも戦えるように油断なく身構えて相手の回りをまわり、腰をおろして話し合いに入る前に、相手の手をつかんで武器を持っていないことを確かめたものである」(W・ソーレル『人間の手の物語』筑摩書房 )。それほど古い時代の二人ではないが、元々「水と油」にもたとえられてきた。これから果たして、一致してことに当ってゆけるだろうか。小沢氏は投票前の演説で、これまで好んで引用してきた言葉を使った。「変らずに生き残る為には、変らなければならない」。ルキノ・ビスコンテが監督した映画「山猫」の中に出てくるという。この映画は19世紀のイタリア統一の英雄だった ガルバルディの率いる義勇軍が、シチリアに攻め入った時代を描いている。小沢氏が引きいたのはバート・ランカスターの扮するシチリアの貴族のセリフだ。かって 「日本改造計画」を著している小沢一郎氏には、日本を変えたいという強い思いがあるようだ。しかしその前に、ここで民主党自身がよほど変らなければなるまい。がけっぷちでかわされた握手の行方を見守りたい。
'06.4.8.朝日新聞
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