散歩道<986>

                    世界の窓・中印、大国としての「責任」は(3)             (1)〜(3)へ続く

 インドは政治面でいかなる国際貢献を成し遂げているのだろうか。核実験を行い、パキスタンとの紛争も解決から程遠い。何よりもインドの標榜する「世界最大の民主主義国」なるスローガンも、制度上はともかく実際を見れば、他の途上国のモデルになり得るとは言い難い。もとより中国もインドもやがては、見るべき国際貢献を行なうことが期待され、今は一種の過渡期であって、この時期には中国とインドを温かく見守り、将来のパートナーシップの精神を分かち合ってゆくことが大切で、多少の矛盾や偽善は許されるべきだとの考え方もあり得よう。しかし、それは米国、西欧の論理ではありえても、日本の論理となり得るのであろうか。日本は非西欧の国でありながら歴史的に開発途上国として経済的特権を享受したことは殆どない。むしろ国際社会において、新参者に対する差別と偏見に対して戦ってきた。又日本は非核三原側を是とし、核実験禁止を訴え、核不拡散を強調している。そのような日本から見て、中国やインドのような核大国がいつまでも「国」として開発途上国扱いされ、国際責任を十分果たしているとは言い難い状況を容認してよいのであろうか。また、容認するとしても、どの程度、どこの分野で容認してよいのか。そして、その基準を、米国一国のいささか恣意(しい)的な判断にゆだねるのではなく国際社会全体の合意の下に作ってゆく努力の一端を負うことこそ、日本の隠れた使命なのではあるまいか。

'06.4.19.朝日新聞   国際交流基金理事長・小倉 和夫氏

関連記事:散歩道<55>上海の事情、<60>上海の外国語の漢字・コンピュータ、<167>中国市場、<212>中国も手を焼くコピー製品、<272>100円ショップ、<295>アジア&ワールド・2050年人口予想、<299>留学生・観光、<368>稲盛和夫様講演会・日中友好、<372>梅原猛様講演会・長江文明、<423>小倉和夫様・日中の両国が色眼鏡はずして,<881>世界の窓・日韓国民レベルの連帯を(1)、<882>(2)