散歩道<979>
大集合(470)1815・ 話(151)・ 経気台(904)・行動経済学は「学」
米シカゴ大のリカード・セイラー教授のノーベル経済学賞受賞で日本も話題になり、今や経産官僚諸氏のお気に入りとなった「行動経済学」について何さつか専門書を読んでみた。
心理学や社会学の成果を引用する前置きに続き小難しい数式も出て来るが、「これは初歩の政治学の話しでしょう」というのが読後の印象だった。
英国の経済学者、ライオネル・ロビンズ教授の名著「経済学の本質と意義」によれば、経済学とは「与えられた財(資源)をいかにに効率的に配分し効用を最大化するかにかかわる人間行動の学問」だそうだが、人間行動学の観察は政治学の領分。私が尊敬する京極純一東大名誉教授は、「人間とは意味を求める生き物」「意味を求める人間には欲がある」。そんな人間が「人生に、社会に、自分の行動に、他者との関わりに、意味を求めて浮世を生きる。その人間の営みを研究するのが政治学である」と説いた。
経済学の基本概念である「効用」にしても、人間が「翼のある生き物」だから出て来るものだ。人の欲望は主観的かつ刹那的、そもそも次元の違う様々な欲望の共通指標などそう簡単に作れるものではない。3個のリンゴと彼女との効用は数値では比較できない。それでも人間はその時その時の状況で選択し行動している。それが市井人の生き様というものではないか。
安国で落とした鍵を明るい街灯の下で探す」のが経済学、という人もある。モデルで説明できないことを「経済は感情で動く」だの「行動変容のナッジ理論」などともっともらしく開設するようになってくると、申し訳ないが素人の生平方、もはや「学」とは言えない。<検>経気台
'18.11.21.朝日新聞
next