散歩道<951>
経済気象台(29)・感動の研究
経済の基調は量的緩和の政策転換を吸収してなお力強い。しかしその一方で、これがどんな未来につながるのか。今何を選択すべきかを考えるに当って、国としてのビジョンが見えないことの不自然さも感じられてきた。それは日本が大切にすべきアイデンティティーがあいまいなこと、経済の発展も何の為のもので、人間にとっての幸せはどうすれば得られるのか、など深く掘り下げないままに来たためだろう。人が最も充実した幸せを感じるのは「驚きの感動すること」とつながっている。それは何事も当り前と受け止め。自分がかかわっても何の意味もない、と感じる現代の、特に若者にはびこっているニヒリズムの対極である。他の人の行動に感動する時も私たちはただ受身ではなく、自分もそう生きたいという衝動に動かされ、行動に移そうとする。そういうダイナミズムを個人も社会ももっと豊かに持つ国づくりは出来ないものか。それには「感動の研究」ともいうベきものが必要かも知れない。物づくりで世界のフロントに立つトヨタやキャノンのような会社も、「驚きの感動」によるダイナミズムを生かしているように見える。身近に誰もが体験した感動はトリノでの荒川静香選手*1のフイギュアスケートの演技だろう。そして挫折から立ち上がり、世界の皆様に最高に喜んでもらえること一点に目的を絞っての出場であり、得点にならないことを承知の上でのイナバウアーであったと聞く。どれほど多くの人が仕事や人生への挑戦の勇気を貰ったことだろう。自然の美しさへの驚き、生かされている恩恵の自覚、私心を超えた志を果たす充実感など、その体験の仕方は様々だが、不思議とその情感は心のもっと深いところ、魂という次元でのエネルギーの共振につながっているように見える。感動の研究はこの魂という人間の根源の追求でもあるのだと思う。
'06.3.17. 朝日新聞
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備考:荒川静香選手は今年のパシフィック開幕戦、オイックスと西武の試合で始球式をした。仙台凱旋パレードには7万人の人が沿道をうめた。