散歩道<913>
面白い文章(30)・経済気象台(22)・虫のいい時代
午前中に何も予定がない日、「わたる世間は鬼ばかり」の再放送を見る。いつもながら、日常に転がっている素材だけで、よくこれまでの連続ドラマガ作れるものだ、と感心させられる。ドラマでは登場人物がそれぞれ、実に自分にとって虫のいいことばかりを主張する。虫のいい親と子。虫のいい夫と妻、そして、虫のいい嫁と姑がそれぞれの都合を、正論のごとくぶつけ合い、バトルを繰り広げる。このドラマの醍醐味である。しかし、世の中に目を移せば、現実の世界も、ドラマのように虫のいい登場人物がひしめき合う。企業のトップは、わずかな投資で、多大な売上を生み出すヒット商品を求める。一方、社員は、業績のいい時にはそれに見合った最大のボーナスを、と声を上げ、又、悪い時には、安定した賃金を、と叫ぶ。又、消費者は、商品の質にこだわるようになったとはいえ、企業が商品の質を上げるために値段を少しでも高く設定すると今度は見向きもしない、消費者が求めているのは、安くても質が高いという、ある意味、虫のいい価値である。また、地球環境と快適さとは、おおかた相反するが、いまだ快適さを手放すことができず、商品に環境への優しさと快適さを求める消費者は少なくない。近頃のニーズとは、豊かさの時代を反映してか、大方、そのような虫のいい思いであろう。市場も受け手と送り手の「虫のよさのぶつかり合いである。しかし、一方、、消費者や企業の虫のよさがテクノロジーを進歩させ、経済を活性化してきた、という一面もある。虫のよさこそ、これからも進化の原動力になっていくのだろう。さて、最近、何かと話題の多い証券市場は、汗を流しては働かなくても、一財産を作りたいという、これまた、投資家たちの虫のいい思いが交錯する場だ、と言えるかもしれない。
朝日新聞