散歩道<878>
経済気象台(19)・所得格差論争
所得格差論争をめぐる議論が盛んだ。国会で野党が小泉改革の「影」として所得格差の拡大を攻撃するのに対し、小泉首相は格差は拡大していないと反論する。データを見ると所得の不平等度合いを示すジニ計数は1980年代から上昇を続け、2002年には当初所得でみて0.5となった。それは25%の人が所得総額の75%を得ていることを示し、年収100億円ファンドマネージャ-の登場といった話題と併せ格差拡大を印象づけるものとなっている。一方で、ジニ計数の上昇は主として、そもそも所得格差が大きい高齢者が増加した為で、実態上の格差は言われているほどには拡大していないという指摘も多い。実際、年齢別に見たジニ計数には大きな経年変化が見られない。現時点で入手可能なデータから見れば、後者の方がもっともらしく思える。しかし、だからと言って問題がないと、断じることもできない。第一に、データーの制約がある。特にパートタイマーやフリータなど、非正規雇用者の所得を最新時点まで正確に把握できる統計がない。丁度その頃から始まった今回の景気回復が、低賃金非正規雇用者への転換によって支えられていたを考えると、実質的な所得格差はここ数年で拡大した可能性がある。第二に、それとともに労働に対する価値観がゆがみ始めている。小売チェーンの店長など、従来は正社員が担っていた業務もパートやアルバイトに委ねられるようになった。しかし彼らの賃金は正社員を大きく下回り、正社員への転換も容易ではない。一方で働き手にとって、昇進や昇給の可能性は確実に低下している。つまり、働き続けることの果実に対する期待と意欲が低下しているのだ。それが、格差の拡大と固定化をもたらす恐れがある。所得格差拡大に関する議論は、今後も続けられる必要がある。