散歩道<848>
大集合(372)・1641・
清貧の思想」再考(1)・日本人の心に根ざす欲にとらわれぬ生活 (1)〜(3)へ続く
1641、 景気回復がささやかれる陰で日本の貧困率が15.3%第3位という貧困大国に成っている。全国民の平均所得の50%以下の所得しか稼いでいない家計がどれだけあるのかという比較の結果だ。勿論貧困者の数を減少させることは緊急の課題である。此れを前提とした上で、貧困をどう理解したらよいか。1つの考えを示したい。日本には精神的伝統として「清貧の思想」がある。日本人の歴史的文人の多くは、決して物欲や金儲けに走らず、簡素な生活を送ることを理想とした。地位や名声を求めるとか世俗的な出世を願う人生を否定し、静かに生を楽しむ人生を薦める。心の充実を求めることに価値を見い出し、できれば詩歌を愛し、小説に親しみ、音楽や絵画を楽しむ、といった精神的な喜びに生きがいを見つけることが、崇高な人生を送ることにつながるとみなしてきた。「清貧の思想」は例えば次のような古典で知ることができる。鴨長明による[方丈記」では、人里離れた方丈、すなわち最小限の家屋に住みながら、自由に思索にふけったのである。吉田兼好の「徒然草」では、世間の喧騒(けんそう)から逃避し、財宝や名声を求めることなく。いずれ死が到来することを覚悟しながら、生きている喜びを賛美する。物欲よりも、風雅に生きることを理想と説いている。鴨長明は若いときに出世を望み、失敗したので、50歳の頃に山に隠遁(とんせい)したとされる。世間への関心と未練を捨て切れなかった長明が、あえて心の葛藤(かっとう)を末に山へ入ったというのは、人間くささが感じられる。一方吉田兼好は30歳ごろ、西行にいたっては23歳の若さで世を捨てているから、ヒトの生き方はさまざまである。これら2人は世俗的な名誉や金銭を若い頃に捨てて、花を愛し、草木を語り、鳥の声を聞き精神的な喜びを心に秘めながら、精神的な喜びを心に秘めながら、淡々と生きることを説いたのである。
06.2.6.朝日新聞 京都大教授 橘木俊詔様
散歩道<781>対談・膨らむ欲望・ITが加速(1)・橘木俊詔様・西垣通様、<782>(2)、<783>(3)、
