散歩道<846>
                          大集合(370)・1639

                時流自論愛国心」と「愛民心」(2)・作家・藤原新也様   (1)〜(3)ヘ続く

1639 これまで世界数十国を回って、それぞれの国家と国民の関係を肌で感じてきたが、多民族で成り立つアメリカという特殊な国は別として、愛国心の強い国には一つの傾向がある。それは家族や親類縁者、そして近隣の絆が強いということである。つまり愛国心とはとりとめのない抽象思考の中から生まれてきたものではなく、親が子を愛し、子が親を愛すという、きわめて身近な愛情の相互補完の土壌の中において芽吹くものなのである、国家はヒトの集団によって構成されていることは言うまでもないが、その集団の最少単位とは家族である。そして、その家族は町内という集団に帰属し、町は市や県に帰属し、その先に国家という大集団が成立するわけだ。したがって、仮にその最小の基本単位が脆弱化している国の国民が愛国心が強いということはありえない。そういう意味では家族崩壊がはじまってはや四半世紀、昨今では崩壊は幼児虐待もで深刻化し、それを監視すべき施設も通り一遍の訪問で幼児を見殺しにするようなことの起こるこの国。あるいはまた、少女がタリウムで母親を殺そうとするこの国、隣近所がすでに機能しなくなっているこの国。そのように家族や隣近所の土壌がやせ細っているこの国において、仮に年寄りが若者に愛国心を求めるとするなら、それはないものねだりに過ぎない。
'06.1.23.朝日新聞・写真家・作家・藤原新也様

散歩道<133>最近の話題から感じたこと(国歌・国旗・主権)<180>失業に関して、仕事について(塩野七生様)、<596>幸福(1)・「モノ・トラウマ」の呪縛・生きることを楽しも