散歩道<811>
散歩道・面白い話・大集合(347)・1596
思潮21・主体的日本とは何か(2)・独自の情報基盤で多様な政策選択を (1)〜(3)続く
1596、 欧米のパーテ−で何度となく聞かされた定番の話がある。「沈没した客船の救命ボートで、誰かが犠牲にならないと全員が死ぬという極限の状況が生じた。英国人には「あなたこそ紳士だ」というと粛然と飛び込んでいった。米国人には「あなたはヒーローになれる」というとガッツポーズで飛び込んだ。ドイツ人には「これはルールだ」と言うと納得した。日本人は「皆様そうしていますうよ」と言うと慌てて飛び込んだ」とう小話である。
国民性をからかう笑い話なのだが、昨今とても笑うきになれない。やがて歴史家が21世紀初頭の日本を総括する時が来れば、9・11後のブッシュのアメリカのサブシステムとして生きることを容易に選択した悲しむべき時代と位置ずけるであろう。ブッシュ大統領自身が、「間違った情報に基ずく戦争だ」と認めたイラク戦争への加担について、この国の指導者には心を痛めた省察が無い。なぜ間違った情報に基ずく戦争に巻き込まれ、この国の青年を海外派兵という形で危険に晒(さら)す状況に踏み込んだのか、為政者としての筋道だった誠実な思考が見えない。政府筋の談話として「サダム・フセインは大量破壊兵器を過去に使用したのだから、開戦も正当だった」と説明していたが、国際社会の常識として之ほど卑劣な姿勢は無い。米国と異なり、日本は最後までサダムの政権と正式の国交を続けていたわけで、その間、大量破壊兵器の使用や人権問題でイラクを批判して国交を断絶したわけでもない。後追い的に自己正当化し、ずる賢く「あいつは危険な奴だから滅びて当然」と悪乗りしているわけで、その軽薄さは日本の品格を失わせている。
'06.1.朝日新聞・(財)日本総合研究所理事長・寺島実郎氏
散歩道<370>寺島実郎・時代の深層底流を読む(1)、<371>(2)、<652>脱9・11への転換(1)、<653>(2)、
