散歩道<788>          

                        
散歩道・面白い話・大集合(326)・1558
                  
平和の時代へ(1)・理想主義を超えよう        (1)~(3)へ続きます

1558、 新年に世界を論じるのであれば、まず理念、価値、理想を語るべき所だろう。だが私は正反対のことを試みたい。現在の国際関係を脅かしているのは理想の喪失ではなく、理想を高く掲げ、自分の抱く理念を疑おうとしない態度であると考えるからだ。その一つが中東から東南アジアにかけて影響力をひろげるイスラム急進勢力である。イスラム社会とその価値観がアメリカとその手先によって脅かされているという彼らの世界観は、パレスチナからアフガニスタンに至るまで、イスラム社会が犠牲にされてきたという認識に裏づけられている。被害者意識は被害妄想を生み出し、加速する。自らの恐怖を投影して、敵の姿が拡大され、それが終末論的な闘争的な根拠を与えるのである。そこでは個個の紛争の詳細な検討はなおざりにされ、「われわれ」と「やつら」の二元的対立にすべてが解消されてしまう。かってPLOが追い求めた左翼的急進主義と比べても極度に観念的なこの世界観の下で、軍人と一般市民の見境もなく殺戮するような無残な暴力が正当化されてしまう。もう一つが、現代アメリカに広がる保守主義だろう。「ネオコン」と通称される政策決定者の一群の背景にはアメリカ社会における民主主義の教条化と、急進的キリスト教徒の活動があった。世界を民主主義とそれを否定する勢力、またキリスト教徒とその信仰を脅かす勢力との対決としてとらえるかれらの世界観は、イスラム急進勢力を鏡に映したように、観念的で不寛容な、友敵二元論に支配されている。そして、この観念に裏打ちされることで、テロリストを撲滅する作戦が一般市民を巻き添えにしても。必要悪として承認されることになる2006年1月7日
'05.1.6.東京大教授・藤原帰

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