散歩道<787>
散歩道・面白い話・大集合(325)・1557
新・欲望論(F)・「私」消え止まらぬ回路」 (D)~(F)と続く
消費社会化で本能から変質
1557、ところで有限の世界では、欲望のサイクルも有限になるはずだが、実際にはあたかも無限であるかのように回転し続け、そこここで、様々な悲喜劇を引き起こす。欲望は必ずしもかなえられないばかりか、時には実質的な損害になって返ってくる。その時、これがサイクルであるがために悪者はすっきり定まらず、定まらないが為に悪者探しは逆に苛烈になる。例えば昨年春のJR西日本の転覆事故*1や、秋に明るみに出たマンションの耐震構造偽装問題*2で、声高に責任の所在がもとめられたのは記憶に新しい。けれども冷静に見るなら、過剰な利便性を求めた社会とJRも、より安価で広いマンションを求めた消費者と業者も、全員が欲望のサイクルを回っていたとはいえまいか。人命の損失も、数1千万円という多額の損害も、現に発生した以上、責任を負うべき主体は社会的にはっきりしているが、それでは片づかない心地悪さが残るのは、誰もが欲望サイクルの一員だったからであろう。又、そこに欲望の本当の始まりである「私」が隠れていたからであろう。「私」の欲望であれば、失意も損失も「私」が引き受けることでおさまりがつくが、「私」の消えた現代の欲望は、始まりも終わりもない。破綻したら破綻したで、ともかく悪者をさがして社会的なつじつまを合わせるだけである。一方、消費者という名の「私」はどこまでも無垢(むく)に止まるのだが、「私」が無垢でないことは、「私」が知っている。2006年1月6日
'06.1.5.朝日新聞・作家・高村薫様
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