散歩道<6866>

                                日曜に想う・炎の記憶 下町に刻まれた日(1)

 
先日亡くなったどなるど・キーンさんとともに、故エドワード・サィディスッカーさん(2007年没 )は日本文学に多大な貢献をした研究者だった。この人の名訳なしに川端康成のノーベル文学賞はかったとさえ言われている。
 東京の下町、谷中に古くからの墓地があって、サィディスッカーさんはよく散策をした。散策をするうちに、ある事に気づく。「大正12年9月1日と昭和20年3月10日に死んだ人々の墓がいかに多いか」と晩年の随筆集「谷中、花と墓地」に書き残している。
 大正の日付けは関東大震災、昭和のほうは東京大空襲である。22年の歳月をはさんで東京の下町を炎で包み、ともに言葉に尽くせぬ惨状をもたらした。
 片や天災である。もう一方は戦災だから、二つは異質な災厄だ。しかし米軍は、関東大震災による木造家屋密集地の膨大な火災被害に早くから注目して参考にしたという。その意味において二つの日付けには暗いつながりがある。
<検>戦争

'
19.3.10.朝日新聞・編集委員・福島 伸二氏