散歩道<6777>       978ら移動

                         風知草・所得格差、過度に拡大

 小泉構造改革が所得格差を拡げたか否かが、昨今の経済論壇をにぎわしている。自由で競争的な市場経済のもとで、所得格差が生じるのは当り前である。格差を是とする者と非とする者とに分かれる。その間に、次のような認識の差異がある。すなわち、それは「勤労意欲の源泉、したって経済活力の源泉は所得格差であるとの命題を「真」とするか「否」かである。この命題は、実証することも論証することもできない。それゆえ、格差の是正についての見解は、労働感によりけりである。私自身は、人はお金のためにのみ働くわけではない、勤労意欲の源泉は「働き甲斐(がい)」だと考える。日本は平等社会だと言われる。短期間に急速な経済発展を遂げた、あるいは遂げつつある東アジア諸国では、個人間・地域間の経済格差が拡大しがちである。ところが平等志向という「本能」が組み込まれている日本では、飢えに苦しむほど貧しい人はいなかったし、日本中どこを旅しても、極端に貧しい町や村に出くわすことがない。競争の決定的な勝者決定的な敗者を出さないという意図せざる仕組みが、この国の社会に内臓されているからだ。欧米先進国に「追いつき追い越せ」をモットーとして、戦後の日本は工業化社会の階段を息せき切って駆け上がってきた。工業化社会は、極端な所得格差を生まない社会である。しかし今、この国はポスト工業化社会とは何なのかを次の二点にようやくできる。①製造業が情報技術を取り入れて生産・経営プロセスを抜本的に改編して見事に蘇る(よみがえる)②ソフトウエア産業(金融、通信、情報、法務、医療、教育、シンクタンクなど)が経済の中枢部に踊り出る。ポスト工業化の進展は、次のような「ひずみ」をもたらす。①国家間・個人間の所得格差の拡大②リスクと不確実性の増大③自由競争の結果が「一人勝ち」に終わる④不正会計の横行。市場主義(構造)改革一辺倒の改革が、ポスト工業化の進展と同時並行的に推し進められていることが、改革の副作用(痛み)としての所得格差拡大を、適度ではなく過度のものにするのである。

'06.3.17.  京都大学経済研究所所長 佐和  隆光様                

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