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                            風知草・社会の品格にこだわれ

 西欧近代の文脈の中で生まれたノーブレス・オブリージュという言葉がある。貴族など高い身分の者には、それ相応した高い社会的責任・義務があるとする考え方のことを、こういうのである。もっと具体的に言うと、貧者や弱者の救済に尽力することが、地位の高い人々の責任・義務だとする考え方である。97年5月イギリス総選挙において労働党が保守党に圧勝し、18年振りに政権を奪還したことの背景にもノーブレス・オブリージュを透かし見ることが出来る。サッチャー政権の下で、所得格差は拡大し、福祉の水準は低下し、公的医療・教育が荒廃した。それを見かねた選挙民の多数派がサッチャーリズムに対して「ノー」といったのだ。欧州ではノーブレス・オブリージュを意識する人が多い。実際、ブレアの率いる労働党を支持したのは、労働者や社会的弱者だけでなく、大学教授、医者、弁護士、官僚、経営者など幅広い職業領域にわたっていた。だからこそ、労働党は文字どおりの「圧勝」をしたのである。日本の武士道にもノーブレス・オブリージュと相通ずるところが大いにある。新渡戸稲造「武士道」(岩波文庫)によると、武士道*1とは「武士がその職業においてまた日常生活において守るべき道を意味する。一言にすれば『武士の掟』、すなわち武人階級の身分に伴う義務である(ノーブレス・オブリージュ)」。そして新渡戸は、武士道を構成する要素の一つとして「仁・惻隠(そくいん)の心」を挙げ、「愛、寛容、同情、憐憫(れんびん)は古来最高の徳として、すなわち人の霊魂の属性中最も高きものとして認められた。(中略)弱者、劣者、敗者、に対する仁は、特に武士に適(ふさ)わしき徳として賞賛せられた」と言う。所で、市場万能主義に、組する現政権は、貧者、弱者に「痛み」を押しつけ、「富める貧者の国をつくろうとしている。西欧近代の思想にも、また日本古来の武士道にも反した政策を着々と推し進めるものだ。ノーブレス・オブリージュと武士道へのこだわりの有無は、社会の品格の高低に関わってくる。日本が品格の低い国であっていいのだろうか。「そうであってはならない」と私は声を大にして言いたい。<検>政治

'06.2.24.朝日新聞  京都大学経済研究所所長 佐和  隆光様

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