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                         靖国問題大切な被害者感情の重視(1)

 私は6年前から上海に法律事務所を開設しており、中国人の考え方や行動パターンを他の人より承知しているものとして、又40年以上法律の仕事に携わってきたものとして「靖国問題」について意見を述べたい。日中戦争において、日本が中国を侵略した歴史はまぎれもない事実であり、その過程で中国人に多大な被害を及ぼしたことは言うまでもない。弁護士からみて刑事事件の取り扱いのむずかしさは、被害を受けた本人しか実感できない被害者感情の見極めにある。例えば、殴ったものと殴られたものとの間に横たわる感情の質的な温度差に対する理解である。加害者は殴ったときの痛みをすぐに忘れてしまうが、被害者は、加害者が罰せられ民事的な損害賠償責任を果たしても、殴られた時の痛みを忘れずに生きていくものである。ところで、日本社会は、法律上これまで被害者の感情にはほとんど配慮してこなかった。わが国の法律がこれを明文化したのはごく最近で、平成12年刑事訴訟法改正により「被害者等の意見の陳述」が規定されたのが始めてである。日本社会が被害者感情を長年にわたり軽視してきたのは、集団主義の国であることにその根拠があると言ってよいだろう。集団主義の原則は互いに仲良くしていくことが基本であるから、何かまずいことがあったとしてもそれを早く忘れ去るよう心掛け、集団の「和」を保つことが何よりも優先されるからである。しかし、日本でも「集団」ではなく「人」を基軸に考え感じる価値基準に移行しつつあることから、被害者感情をさまざまな場面で取り上げざるを得ない状況になってきている。
'06.2.16. 朝日新聞 わたしの視点弁護士高井伸夫様

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備考:*1この文章の将来予測は淋しい限りだ