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                      風知草携帯電話不況の元凶

 1990年代以降に登場した新製品の殆どがデジタル技術の賜物である。一般に、それら製品の普及が及ばず「産業関連的効果」は相対的に乏しい。この点を理解いただくために乗用車と携帯電話を比較してみよう。産業関連的な波及効果において、乗用車に勝るものはない。重さ1トンを超える乗用車が売れれば、鉄、非鉄金属、板ガラス、化学繊維など、あらゆる素材型産業が潤う。自動車が走るために必要なガソリンや軽油など売るガソリンスタンドが道路沿いの随所に設置され、大量の雇用を生み出す。道路整備は土木建設業者をうるおす。損害保険会社は自動車保険という新しい保険業無を担う。自動車免許取得と車検の為の大規模な市場が生まれる。自動車産業の波及効果の大きさには他の産業に類例を見ないほどのものがある。発展途上諸国がナショナルカーすなわち自動車産業の国内生産を目指すのは、こうした波及効果の大きさを知ってのことである。仮に戦後の日本で自動車が一台たりとも生産されなかったとすれば、日本の国内総生産(GDP)は今あるそれの半分にも満たなかっただろう。90年代半ば以降の携帯電話の普及のスピードには、実にすさまじいものがあった。いまや、老若と織り交ぜて、およそ3人に2台という普及率である。自動車が人々のライフスタイルを変えたのと同じく、携帯電話もまた人々のライフスタイルを抜本的に塗り替えた。活字離れの傾向を加速したばかりか、若者はマンガすら読まなくなった。携帯電話の重さは100グラム前後。電子部品、液晶といった軽い素材からできている。その点、自動車とは大違いである。携帯電話の電力の電力消費量は高がしれている。携帯電話の料金は、1カ月に1万円を超える場合が多い。携帯電話を必需品と心得る若者達は、他の買い物を控えざるを得なくなる。携帯電話が1台あれば、新聞を読める、本も読める、写真やビデオも撮れる、メールもできるとなると、カメラ、新聞、書籍、パソコン、公衆電話などの売れ行きを細らせる。そんなわけで、携帯電話は個人消費を低迷させた元凶のように私には思えるのだが。
'06.2.17.朝日新聞   京都大学経済研究所所長 佐和  隆光様

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