散歩道<6584>

                                戦後73年とアジア(5)・ 未来へ向け記憶を紡ぐ


 一人一人と向きあう

 そうした政府間の関係や取りくみは大きな影響を及ぼす一方、歴史の和解を進める主役はあくまで個々の人間である。
 歴史認識について、国からのお仕着せやステレオタイプではなく、自由で多様な見方や意見をもち、交流する。そのための民主主義の成熟もかかせない。
 近年、加害者と被害者の市民との関係を複雑さを考えさせたのは、オバマ米大統領による2年前の広島訪問だった。
 大きな癒やしを得た人と、謝罪なき政治的演出と見たひとと。地元の受け止めは交錯したが、それでも歴史を巡る議論に一石を投じたのは間違いない。
 あのときオバマ氏と抱擁した被爆者の森重昭さん
(81)は言う。「大事なのは、人間として考えることではないですか」
 今やアジアから日本を訪れる観光客は年間2400万人。歴史や文化をめぐる研究者や留学生の交流も裾野を広げてきた。個人の発信がネットを介して各国で反響を呼ぶ時代、生身の人間同士、平和を語りあう機会をもっと増やせないか。
 自らの過去を美化することはできない。しかし、将来を代えることはできる。平和と繁栄と人権を尊ぶ目標を各国の国民とともにし、アジアの未来への新たな記憶を紡いでいく。そんな日本の姿を築いていきたい。
<検>戦争、<検>外国、

'18.8.15.朝日新聞