散歩道<6557>
日曜日に想う(1)・肩車の「凱旋将軍」見守りたい
二枚目俳優であるとともに、文は人なりを思わせる文章家でもあった。加藤剛さんの訃報を聞いて8年前に頂戴した手紙を取り出して眺めた。
当時は私は天声人語を担当していて、ある日、加藤さんの随筆の一説を拝読してコラムを仕立てた。掲載誌をお送りしたことへの、律儀な返礼の手紙である。
話題は子供への虐待だった。男の子が相次いで命を奪われた。奈良の子は5歳なのに体重は6㌔しかなかった。埼玉の4歳は、水を飲ませてと哀願する声を近所の人が聞いていた。胸のつぶれそうなコラムの中に、ともしびのようにさしはさんだのが、加藤さんが幼いわが子を肩車する随筆の場面だった。
肩に乗って父親の額をしっかり押さえる小さな両手を、加藤さんは「若木の枝で編んだ桂冠(けいかん)」とたたえていた。その栄誉の桂冠を頭に頂(いただ)いて、加藤さんは「凱旋将軍のごとく」ほこらしげに歩むのである。ごく短い描写ながら、子への情愛が文章からにじみ出してくる。
子供にとってみれば、ヒトから愛された記憶が、愛するという資質を耕すのだろうと感じたものだ。虐待してしまう親は、自分もまた受けた愛情が薄かったという話を往々耳にする。
手紙を頂いて以来、痛ましい虐待のニュースに接するたびに、ふと加藤さんの肩車が思い出された。かなしいことに今年もまた、それは繰り返された。
<検>教育、<検>世相、
'18.7.22編集委員・福島紳二
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