散歩道<6476>
                         ザ・コラム・流動化するアジアで(1)

                                    「見る 聞く 言う」の存在感
          (1)~(3)

 あのサルたちはいま、何処にいるだろう。インドのモディ首相が安倍晋三首相に送った白い大理石製の「三猿」である。
 「見ざる 言わざる 聞かざる」。2017年9月、ともにガンジーの旧居を訪ねた記念の品だ。ガンジは、日本の有名な僧侶、藤井日達氏から送られた「三猿」像を常にそばに置いたそうだ。そして、「悪を見るな、悪を聞くな、悪を言うな」と教えたことが、インドでひろく知られている。
 森友・加計問題をはじめとする国会でのやり取りを見ながら、あの白いサルが浮かんだ。モディ氏にはいっそ「見る 聞く 言う」のサルをつくって渡してほしかった。
 国際会議にまつわる伝説がある。「成功するには日本をしゃべらせ、インドを黙らせる」。日本でも雄弁な政治家や官僚は増えたと聞くが、かっては主張の弱さで知られた。逆に問われなくても激しく意見を述べ、まとまりかけた議論を揺さぶるのがインド。誇張が混じるとはいえ、自分は他者とは異なる前提で独立した意見を述べる社会。十数億人がひしめくなか、その多様性がインドという国家を作っている。<検>社説、<検>外国・インド、

  
'18.6.21. 朝日新聞・編集委員・吉岡 桂子氏