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                 シルクロード国際シンポジュームアジアを結ぶ情の音色

 近代日本の知識人は「情感」「情緒」を理性的、知的でないものとして排除してきった。しかし、いま日本人が必要としているものは、まさにこの「情」ではないか。万葉集の時代から大切にしてきた「情」を捨て、日本人の心は乾ききってしまった。乾いたものは軽くなり、捨てやすくなる。なんともいえない凶悪事件や自殺が多発するのは、合理主義や個人主義を掲げて「乾いた社会」を目指してきたことと無縁ではない。「情」を取り戻すには鍵になるものが「音」だ。例えば、琵琶の哀切な音。正倉院御物にもある琵琶は、アラビアやペルシャで使われているものが、シルクロードで中央アジアから中国、朝鮮半島をへて日本へやってきた。それまでの土笛や太鼓の音とは違う。新しい音は日本人の心にも大きな影響を与えたであろう。音楽だけでなく、伝統的な神道を持ちながら佛教を受け入れたのを見ても、旧来の感性の上に外来の新しい情感を取り入れる日本人の性質は、今も変わっていない。明治以降に日本に入ってきた西洋音楽は、長調の曲を明るく近代的なものとして持ち上げ、邦楽のよう短調の曲は、暗く前近代的なものとして見下げた。しかし、世界的に見れば、トルコの行進曲、ポルトガルのファド、南米のタンゴなど、短調の音楽は決して少数派ではない。奈良の都に流れていた短調の曲は、中国へ、そしてシルクロードを通じて中央アジアへとつながる音だった。その「情」の音楽を、もっと大切にする必要がある。
'05.12.23.朝日新聞作家・五木寛之様

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備考:'09.7.4.朝日新聞、最古のイスラム陶器、平城京(奈良市)西大寺旧境内から見つかる。8世紀後半のもので、近くで「神護景雲二年](768年)と記した木簡も見つかる。(波形の模様、光沢のある上薬が表面と内側に塗られている)