散歩道<6132>
ザ・コラム・ メディアの分断(2)・「公平原則」廃した先には
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「米国の分断」と「メディアの分断」はどう関係しているのか。
ピユー・リサーチセンターは、大統領選直後、有権者が主な情報源としたメディアがどこなのか調査した。最も多かったのは保守系のケーブル放送、フォクス・ニュースだった。全投票者の19%を占め、そのほとんどはトランプ氏に投票していた。民主党のヒラリークリントン氏に投票した人は、CNNやMSNBC、ニューヨーク・タイムス紙などリベラル色があるメディアを情報源とした人が多かった。
メディアが分裂したから米国民が分裂したのか、国民が分裂しているからメディアの党派色が強いのか。研究者の意見も様々だが、「鶏と卵」のように,相互作用はあるとみるべきだろう。
親しい米国人のもと著名なジャーナリストは、「ファーネスト・ドクトリン(公平原則)のは意思が深刻な間違いだった」と嘆く。「公平原則」とは、米連邦通信委員会(FCC)が、テレビ・ラジオに対し、重要な問題を義務づけていた原則だが、87年に廃止された。ケーブルや衛星放送の普及で多チャンネル時代となり、多様な意見が十分に報道される環境になったという考え方が背景にある。
それ以降、放送局は、「中立性」にさほどこだわらず報道出来るようになった。ケーブル放送はもともと公平原則の対象外ではあったが、90年代以降、視聴率確保の為次第に党派性を強めた。互いに党派的な批判を繰り返す中で、政治への信頼もメディアへの信頼もともに沈んでいった。
政治には、異なる意見の調整や妥協が不可欠だ。だが、ここまで世論が分裂すると、政策を進めることが難しくなる。<検>政治、
'18.1.4.朝日新聞・編集委員・山脇岳志氏
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