散歩道<6012>

                                    経済気象台(851)・作り手と食べての出会い

 数年前の夏、ある農産物の直売イベントの交流会でであった、農業青年がいる交流会も進み、イベントに参加したきっかけなどを発言する流れとなったとき、彼は初めて5年前に参加した時のことを語り始めた。
 あるメーカーとの話が進み、契約栽培でトマトをつくった。しかし就農してまだ日が浅く、経験不足という事もあり、規格基準に見合うものは殆ど生産できなかった。メーカーの担当者からは、「取引出来ない」といわれ、自分の生きる価値が否定されたような気がして、落ち込んでいた。そんな中、この直売イベントが持ち込まれ、乗り気ではなかったが家族と参加することにした。
 取引が出来ない、すなわち「価値がない」と言われた、不格好なトマトを並べた所、やってきたお客さんに質問された。
 「このトマト、おいしいの?」
 青年は夢中になって答えた。見た目は悪いけど一生懸命育てたこと、味には自信があるということを。お客さんは「それなら一ついただくわ」と言いってくれた。気がつけば、その日持ち込んだ野菜は全て、閉店時間よりも早く、売り切れた。その日から、北海道の農家として生きていく自分の目標ができたという。
 いつも明るく自信と情熱を持って農業に取り組んでいるように見える彼が経験した、農家として生きていく自信を持つきっかけとなったあの一日。農業は、作り手がいて、そして食べる人がいて、初めて成り立つ。
 農産物の直売イベントは、全国各地で盛んに開かれている。作り手や食べての人生を変えるような出会いが、この夏も生まれることだろう。
'17.8.18, 朝日新聞
<134>曲がる大根
備考:後は、流通方法の中にどう組み合わせるかの問題と思う。出来れば格好良いトマトの方がいいにはいいが!、

           
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