散歩道<6001>          652から移動

                             脱9・11への転換  寺島実郎氏(1)           (1)~(4)へ続く

 9/11で世界は変わったといわれるが、4年が経過し震源地たる米国において、舞台は「脱9・11事件」に向けて回転し始めている。キーワードはハリケーンとイラクである。ハリケーンが炙(あぶ)り出したのは「米国の優位性」の虚構だった。衝撃だったのは、千百人の犠牲者が必ずしも自然災害によるものではなく、かなりが、略奪・暴行などの犯罪被害者だったという事実である。背景には「貧困」「人種」の問題もある。米国には貧困レベル以下の3590万人存在する。約半分は黒人、ヒスパニックである。避難の手段さえ持たないそれらの社会的弱者をハリケーンは直撃した。ルイジアナ州の1/3がイラクに派兵されていたことである。救出復旧も後手にまわった。2000年に2945億ドルだった国防予算は、今年5139億ドルと7割以上も増加、イラク戦争を睨んで不気味な産軍複合体に回帰する米国だが、国民の生命を守るインフラは「堤防決壊」に象徴されるほど手薄なものだった。イラクどころではないとの自省が確実に広がりつつある。イラク米兵の死者は1931人米国除く多国軍197人、イラクの死者は4万人を越すとされる。これだけの墓標を前に誰が「正当な戦争の犠牲はやむをえない」と思うだろうか。米国民も2000に迫る棺桶(かんおけ)と2800億ドルを越す累積戦費に愕然(がくぜん)とし、6割以上が「イラク戦争は間違った戦争」と思い始めている。
 
2005年10月8日  
   
'05.10.6.朝日新聞・日本総合研究所理事長

関連記事:散歩道<64>21世紀に突きつけられた課題、<150>バックアップシステム、<152>1年目の同時多発テロ、<202>米国の問題・世界への無関心、<364>9・11事件3年目(1)、<365>(2),<370>寺島実郎氏時代の深層底流を読む(1)、<371>(2)、<562>ロンドン・エジプト同時多発テロ(1)<571>(2)<855>心の風景