散歩道<5891>

                       論壇時評・人間と機械(2)・  AIが絶対出来ないこと

 つまり問題はこうだ。AIそのものは新しい価値や成長を生み出すわけではない。イノベーションを起こすには、新しい価値や、社会制度の改革が必要だ。だがそれは、人間にしか出来ない。
 「人間はAIに勝てるか」という問いがある。だが実は、人間は昔から機械に負けている。自動車より早く走れる人はいない。しかしそのことで、「人間は自動車に負けた」と嘆く人はいない。それは、自動車を人間の補助として使いこなせるように、社会の在り方を革新(イノベーション)したからだ。人間が機械に勝てるとすれば、機械と競争することによってではなく、機械と共存できるように社会を革新することによってである
 AIについても共存の方向で社会を変える試みがある。米マサチューセッツ工科大教授のダニエラ
ラスは、自動運転でトラック運転手の仕事をなくすより、運転手が疲労や睡魔に襲われた際の安全装備として自動運転を使う方が現実的だと唱えた。⑤、ドイツの労組は、政府や経済会と共同して、AI導入に備えた職業訓練制度を提起している⑥。

<検>仕事、<検>IT、<検>波聞風問・AI人材(1)~(3) どう育てるか産官学に課題、

'17.7.27.朝日新聞・歴史社会学者・慶應大学教授・小熊 英二氏