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 9.11後のテロと世界・いびつな世界の構造是正を

 ひと握りのテロリストグループが、超大国アメリカに打撃を与えた。その余震は今も世界を揺るがしている。9.11の何が世界を変えたのだろう。冷戦時代脅威は相手国の正規軍と核だった。相手が軍なら行動は読み安い。反撃で、相手国の国民に被害が及ぶので、抑止力は働く、だが、テロリストは国家でないから、国民もいないし責任もない。好き勝ってに目標を攻撃できる。ポスト冷戦の時代、テロが主要な脅威になるだろうとの予測が、現実となった。今後似たような事件の続発を覚悟しなくてはならない。テロの背景には、深刻な国際社会の矛盾が在る。グロバル化が進み資本やハイテク技術の移転が活発になった。中国などの台頭も目覚しい。それに引きひかえアフリカや中南米ほかの国々は、人口増加に悩み、貧困にあえいでいる。勝ち組み負け組みがはっきりしたアリ地獄のような世界になっている。自由貿易で、どの国も豊かになると、教科書に書いてあった。実際には、貿易の利益が一部の国に集中している。ハイテク商品の開発者利益を先進国が独占し、第三世界は付加価値の低い商品しか送り出せない。限られた資源も、先進国が消費してしまう。今の世界は「持続可能な発展」とはほど遠い、欠陥だらけのシステムだ。しわ寄せが発展途上国に集中している。そこで暮らす人々に、世界はどう映るだろう?インターネットは軽々と国境を越え、どんな情報も安く手に入る。だが、資本や技術は、採算が合わないからやってこないし、人間の移動は国境が阻んでいる。食料や石油など資源価格は上昇。要するに、先進国の豊かさは手に取るようにわかるのに、食卓はみじめで仕事もなく、移民も出来ない。
 こんなバカなという信条が、反米感情とテロリズムの温床ではないか。どうすればいい?テロは許されない。テロを警戒し、治安を強化するのも当然だ。だがそれだけでは、テロは根絶できない。爆弾も毒物も、テロを正当化する主張やイデオロギーも、ネットですぐ手に入る。ブッシュ流「テロに対する闘い」は、風呂場を掃除せずカビだらけにしておいて、あわてて除菌剤を撒くようなもの。世界の構造が見えてないのだ。まず、テロの危険をゼロにするなどできないと」腹をくくろう。そして、この世界のいびつな構造を是正することのほうに、全力を尽くそう。除菌剤にたよらず。ちゃんと掃除すべきなのだ。日本の役割は大きい。たとえば科学技術。日本はアメリカ並みの生活で、消費揖エネルギーは半分。日本型ライフスタイルを世界基準にすれば、同じ資源で2倍の人口が豊かに生活できる計算になる。技術は資源を節約する。日本が世界に提供すべきなのは、技術と教育である。道路や港湾などインフラ中心のODAを大転換すべきだ。省資源方の産業文明。この方向に日本の世界戦略を定めよう。そして汗をかこう。そうすれば、どうか国連の常任理事国になってくれと、世界中の国々が頼みに来る
   2005年9月22日

'05.9.17.朝日新聞、橋爪大三郎東京工業大学教授

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