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9.11後のテロと世界・イラク戦争離れ米で拍車
米ブッシュ政権は9・11以来テロがないのは政府のテロ対策の成果だと主張しているがテロがないが故にかっての切迫感が消えてしまった。ハリケーン災害やガソリン高騰もあり、大統領が取り組むべき課題は内政だという雰囲気だ。「テロとの闘いは長く困難なもので、忍耐が要求される」と言い、ほとんどの国民それを受け入れた。「反テロ愛国法」も時限立法で制定され、自由を重んじてきた米国社会のあり方も「テロ予防優先」の掛け声のもと、大きく変わった。アフガニスタンでの軍事力行使は野党民主党も支持し、未だに反対する声はほとんどない。だが、イラク戦争については今年6月の世論調査で「間違った戦争だった」との回答が半数を超えた。イラク戦争で米国が支払った人命や経済的なコストは「耐えがたい、容認しがたい」という答えは70%を超える。長期にわたる占領と復興支援には人とカネとコストがかかるが、米国はその用意が不十分だった。米国の場合、国民も議会も、そういったコストを長い間、払い続けることに対する許容量は小さい。「石油を売れば占領経費をまかなうことができる」といったネオコンの楽観的な主張はまったく見込み違いで、彼らの権威失墜につながった。ハリケーンで大きな被害を受けたルイジアナ、ミシシッピ両州から州兵4400人がイラクに派遣され、水陸両用車など災害対策に役立つ機材も持っていっている。そのことも民心のイラク戦争離れに拍車をかけている。いまや与党野党から「イラクから米軍撤退の日程を示すべきだと」いった声が高まっている。
日本でも自民党が改革の看板を民主党から奪って衆議院選で大勝したように米国でも、共和党が民主党から「反戦」の看板を奪うべく、08年の大統領候補にイラク戦争に批判的な人を指名する可能性もないとはいえない。こうした中、北朝鮮やイランの核開発疑惑に対し米国が軍事力行使に打って出る可能性は小さい。国連安保理などを使いながら、他の国と協調してやっていくことになるだろう。さて日本はイラクへ自衛隊派遣で米国に感謝され、損得勘定からいえば、得をしている面もある。ただ米国との関係ばかりで論じられているがイラク政府が自衛隊派遣継続を望んでいることも大事なポイントだ。産油国イラクとの友好関係を築く上で、自衛隊以外の形での復興支援も視野に入れつつ、来年、再来年の撤退を念頭においていいのではないか。1方、米国がテロ支援国家と名指しするイランの核兵器開発疑惑について、日本は石油権益との兼ね合いから困難な立場に置かれている。米国だけでなく英独仏3カ国とイランとの交渉も決裂しかかっている。核開発が明白になり、国連安保理に付託された場合、日本は厳しい選択を迫られるが、核開発を許容するわけにはいかない。核放棄を説得する努力を最大限しつつ、国際社会の責任ある一員として、最終的には米欧の立場に立つしかないだろう。2005年9月22日
朝日新聞、'06.3.20.イラク戦争はじまって3年を迎える、開戦以来米兵2314人、イラク市民33679~37796人亡くなった。
'05.9.21.朝日新聞、東京大教授久保文明氏