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衆議院選の結果を見て(下)(1)・佐伯啓思氏・壮大で皮肉な「茶晩劇」・有効な政策肢示さず
事前の予想をしのぐ自民党の大勝利に終わった今回の選挙は特に民主党にとってはきわめて皮肉な選挙であった。派閥調整型の自民党政治の終焉(しゅうえん)、首相のリーダーシップ強化,小選挙区制による政策中心の政治を唱えたのは小沢一郎氏や岡田代表であったからだ。93年小沢氏や岡田氏が自民党を割って出た時、小泉氏は彼らの改革に反対したのである。ところが本来民主党の主張であった。派閥政治の終息や首相権限の強化、政策選択の選挙はことごとく小泉政治によって実現され、民主党はまさにそのおかげで敗北した。笑劇と言いたくなるほどの皮肉というほか無い。それもそのはず、民主党は政策選択肢を打ち出せず、代替的政策が不明瞭なまま政権選択を訴えても説得力はない。小泉氏はこの選挙を郵政民営化の信を問う一種の国民投票だと主張した。無論これは強引な主張だ。だが、民主党は、それに対抗できるだけの批判を打ち出せなかった。これでは二大政党制などできるわけはなく、結果として、小泉氏の演出に大衆が喝采を送るという壮大な茶晩劇が敢行されたわけである。郵政民営化を中心とする小泉氏の政治改革は、もともと自民党派閥の軸であった橋本派との権力闘争の性格の強いものだった。だが、小泉氏は、それを自民党から日本へと舞台を移し変え、郵政民営化を国民的「改革」のシンボルへと仕上げることに成功した。だが郵政民営化は、ただ、「政」と「官」の癒着解消、政治家と結びついた金の浄化という政治改革の議題であるだけでない。そこにはもうひとつ本質的な論点があり、郵政民営化が象徴的な形で論議の焦点をなすのは、ここに選択を要する二つの考え方が集約されてくるからだ。というのも、郵政民営化は、明らかに、90年代以来の金融市場のグローバル化と市場競争の強化という流れを背景にもっているからであり、問題は、この市場のグローバル化の中で340兆円にのぼると言われる郵便貯金をいかに有効利用するか、という一点にこそある。 .2005年9月14日、
'05.9.13.朝日新聞、京都大教授(社会経済学)佐伯啓思氏
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