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対談・現代を生きる(3):なだ いなださんと河瀬 直美さま (1)〜(3)と続きます。
羅針盤必要な時代に「自分つくるり」の場を
自分でダメだと思っている時、認めてくれる大人の人って大事ですね、だけど、私より上の世代の人達は自信を喪失しているように見える。自分の子供にもそれが正しいのかどうか言ってやる自信がない。たとえば身近な上司や親から「お前は大丈夫だ」って一言あったらそれだけでいい。自信も出るし、ちゃんと立つていられると思う。そんなふうにいってくれる人って少ない。つながりが希薄というか。職場の仲間の何気な一言に、自分を作るきっかけになるものもある。小さな職場や、モノつくりの場には、みんなが寄り集まって「自分をつくる」という雰囲気がまだ残っている。だけど昇進をただ目指すだけの大きな組織では、そういうものがだんだん見つからなくなっている。こうした触れ合いのようなものが失われてきた。次の時代はもっと大きな何かを見失っていくのではないか。優しい声をかけられれば、かけられた人はうれしい気持ちになる。いい気持ちになった人は誰かにいいことをしたくなる。そういうことからどんどんよくなる感じはあると思う。でもいっぱい人がいても都会の雑踏では皆こわい顔をして、何も見ずに通り過ぎていく。それでも場所が違えば同じ人でも優しくなれるんだと思うこともある。現代社会は「家族」が壊れてしまったから擬似家族を一生懸命作ろうという社会でもあるんです。治療の1つ、グループセラピーや、断酒会もそう。暴走族だってそう。家族が崩壊し自分つくりの助けになるような人を失っちゃったから、擬似家族を求めたくなる。でもそれは荒廃している学校の遊び仲間やインターネットを通じて集まる自殺志願者仲間のように、自己破壊に向かうような危険な場になったりもする。しかし、皆がぴったりとうまく、いい方向で集まる場が出来れば豊かな自分つくりの場になっていく、もし、社会の危機を感じているなら、嘆いたり、説教をたれたりするよりも、自分つくりができるグループをつくり、積極的にかかわっていくことが必要と思う。うまく自分を表現できる手段を見つけて、自分が自分である時間をちゃんと持てていればもう少し皆元気になるんじゃないかと思う。親が元気で笑っていれば子供たちは安心して生き生きするのでは、そんな活力のある世の中っていいですね。2005年9月4日 '05.8.5.朝日新聞
備考:なだ いなだ(精神科医)さんと河瀬 直美さま(映画監督)
備考:対談・現代を生きる(・なだ いなださんと河瀬 直美さん