散歩道<5750>
経済気象台(776)・ベトナムの卵売り
てんびん棒についた両端のカゴに、野菜や果物あるいは卵をのせた行商が行き交う。ベトナムの街の日常的な風景である。卵の行商など見ていると、「累卵の危うき」そのもののように見えるのだが、積み方があまりに見事で、芸術のようである。行商人のほとんどは女性だが、値札の価格を見ると、彼女たちの日収は、日本円にしか300円か400円にしかならないだろう。見ていたら一緒に写真を取ろうと持ちかけてきたので、応じたら、米ドルで2㌦チップを請求された。彼女たちのビジネス体験なのだろう。こちらも、したたかに1㌦に値切ったが、あとでやっぱり2㌦にしておけばよかったな、と後悔した。先の天皇・皇后両陛下のベトナム訪問の際に、帰還してしまった日本兵との子供を、一人で育てた夫人との交流が放映された。女性の主な働き場所である、行商や繊維産業における薄給を考えるとき、その子育ての苦労が伝わってきて、思わずこみあげて来るものがあった。悲惨な戦争と貧しさを乗り越えてきた夫人の顔の穏やかさにうたれたのである。むろんそれは、ベトナム訪問にかけた両陛下の思いが伝わってきたこともあった。シリアを代表として中東で難民が激増しているのは、EU(欧州連合)の破たんすら予感させる。秩序があって、明日の暮らしを設計できる社会は幸せである。民主主義や人権を語ることはやさしい。だが、それを実現するためには、途方もない困難を必要とする国や地域がある。途上国を歩くと、日本でいわれる「下流」が、実は「上流」であることがよくわかる。
16.10.27.朝日新聞 <検>経済気象台、<検>外国、
備考:幸せは、国内や町内の人との比較で感じものではない、比較で満足を得ようとするといつまでも心は安定しないものだ。