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               三者三論小泉政治を検証する成果乏しいが、首相観変えた  これから3回に渡り3人の意見を記述します

 小泉政権が真剣に構造改革を進めようとしてきた事は認めたい。特に不良債権の早期処理は小泉政権ならではとおもう。だが他の分野では成果は乏しかった。足元の自民党や閣僚から強い抵抗を受け道路公団の民営化では将来の高速道路の建設に歯止めをかけられなかったほか、三位一体改革も骨抜きにされて、ともに大きな成果とはいいがたい。自民党政治は、経済が右肩上がりの80年代までは、拡大した富を様々な分野に配分するという機能を担ってきた。だが、右肩上がりが終わった90年代以降も、そうした既得権益を放置して借金してまで配分するという方向に進みつづけたため、国債の残高がうずたかく積み上げられてしまった。小泉首相はこうした既得権益の構造に挑戦したが、多数に無勢で厚い壁に阻まれ、肝心の自民党は変わらないままだった。首相は「改革の本丸」と位置ずける郵政民営化法案の否決を受けて、衆院解散を断交し、ようやく「自民党を変える」機会を得た。しかし、就任当初の人気絶頂の時に衆院を解散するなどして、あらかじめ党内に改革態勢を整えてから改革に取り組めば、こんな面倒な事態にはならなかったのではないか。もっと周到な政権戦略で望めばよかった。「優先順位が低い郵政民営化にかまけて、他の重要な課題に十分取り組んでいない」という批判もあるだろう。確かに国民から見て郵政民営化は当面取り組むべき改革の優先順位としては低いように見える。なぜなら、今現在は大多数の国民が官業である郵便事業の受益者だからだ。だが、郵政民営化の本質は、郵貯・簡保資金を原資にして特殊法人に資金を垂れ流す財政投融資制度に手をつけることだ。その放漫な資金運用は将来、国民負担増加という形で跳ね返ってくる。首相の危機感はそこにあるから、改革の一つの方向性としては間違っていない。そして、小泉首相が参院で法案否決を受けて衆院解散にうって出たことも、それ自体はスジが通っているといえる。参院の構成が変わらなくても、郵政民営化を争点とした総選挙で与党が勝てば参院には現時点での民意を尊重する政治的責任が生じる。今回の選挙は首相の側から見れば、郵政民営化の是非を問う国民投票だ。ただ、法案に反対した議員にたいし、説得も抜きに一方的に対立候補を立てているのはいかがなものか。自民党が郵政民営化を一枚看板にして戦えば、何が何でも反対だという人は公認を辞退する。それを待ってからでもよかったのではないか。やや荒っぽ過ぎる面があるとはいえ、小泉首相は政治観、首相観をおおきく変えた。一つの課題に政治生命をかけるという首相は久しくいなかったからだ。それだからこそ、この総選挙で小泉首相と対決する民主党の岡田代表には、党の公約とは別に、党首として明快な公約を打ち出してほしい。党首そのものが1つの課題に重大な関心をもっていて、それを実現するためなら政治生命をかける、という迫力がなければ、党首にも党にもオーラーは出ない。小泉政権は外交面ではほころびが目立つから、党首の公約次第では民主党にも勝機は十分ある。小泉首相の郵政民営化に対抗できる「官のリストラ」の分野で思い切った改革を打ち出し、どちらが真の改革派かを競ってほしいものだ。

'05.8.19.朝日新聞・元経企庁長官・田中修征様

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