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三者三論・小泉政治を検証する・「見えない弱者を」生んだ これから3回に渡り3 人の意見を記述します
小泉内閣は改革の遂行を旗印にした内閣だ。ちまたでは、日本経済の構造を変えそれが景気回復のきっかけになった。との評価をしばしば聞く、本当にそうだろうか。首相に就任する前のGDP(国内総生産)名目値は'00年510兆円、'04年506兆円である。雇用者報酬はサラリーマンに支払われる給与や賞与を示す数値'01年1.2%減、'02年2.3%減、’03年1.0%減'、04年0.1%減つまり伸びたことがない。にもかかわらず世間には、「ボーナス支給が3年連続で延びた」という肯定的な認識が少なくない。なぜか、ここに小泉改革の本質が隠されている。ボーナス統計として流布するのは主に大企業を調査対象にした統計だ。中小企業の実態はそこに表れない。又大企業の中でも非正社員の人々は統計外にいる。厚生労働省の「就業形態の多様化に関する総合実態調査」を見ると99年に28%だった「非正社員」の比率が03年の調査では35%まで上昇している。この間、日本社会は劇的に変わったのだ。失業率が下がったともいわれるが、その裏には、リストラや倒産で失業した多くの人々が、正社員での再就職が果たせず、パートなどで働いている実態がある。前出の厚労省調査によれば非社員の4割は月給が10万円未満、10万円以上20万円未満の人も4割いる。小泉内閣は短期間で多くの「見えない弱者」を生みだしたのだ。他方には、カネを右から左へ動かすだけで巨万の富を得る人々がいる。勝ち組みと負け組みの間に、明確な線が引かれつつある。では弱者の立場に追い込まれた人々の多くが、にもかかわらずその「改革」を支持しているのはなぜだろう。思い起こされるのは1920年代末、緊縮財政や産業合理化を掲げ、「既存勢力との対決」をうたう浜口雄幸内閣が登場した。金融解禁で経済がデフレに陥ったにもかかわらず浜口への支持は落ちなかった。明日の伸びんが為に今日縮む・・・・そう改革を訴える首相に有権者は引かれた。状況が苦しくなればなるほど市民は、劇的な変革と「強い改革者」を求める心理になる、歴史はそう教える。今回「郵政解散」で首相は、法案修正を求める議員を「造反者」にした。小さな意見の違いすら認めずバッサリきりすてた振る舞いは、もはや独裁者である。だが、独裁者に近づくほど支持が高まるという恐れもある。有権者が独裁者を強い改革者と認識してしまう場合である。総選挙で小泉氏が勝てば、かれは今まで以上に強い権力を手にする。誰も止められなくなるだろう。それほどの大きな権限を彼に与えてよいのか否か。を判断すべきだ。首相は「郵政改革の是非が選挙の焦点だ」との考えを広めようとしている。だが、与党が出した今回の郵政改革関連法案に賛成か否か」という問題を、「郵政改革に賛成か否か」の問題にすり替えさせてはなるまい。「造反派」は改革の否定者だったのか。野党は改革について何を言っているのか。いまこそ「改革とは何か」を必死で勉強するときだ。
'05.8.19.朝日新聞・経済アナリスト森永卓郎様
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