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            高階秀爾様の・美の現在(3)・文哉、是真、古径自然への精密な観察眼近代に連なる日本の美   (1)~(4)へ続く

 作品は、精緻(せいち)な対象観察に支えられた自然美の表現という同様の達成は「柴田是真(1807-91)・・・明治宮殿の天井画と写生帖」展にもうかがわれる。天井画のため思い切って拡大された可憐(かれん)な花たちは、それでも生き生きとした自然の姿を失わず、圧倒するような華やかさを見せているが、写生帖は、その効果が絶え間ない実地観察の訓練の賜物であることを教えてくれる。もともと日本の伝統的絵画については、装飾性にすぐれてはいても写実性に欠けるという漠然とした通念があった。だが江戸期の狩野派や琳派の画家たちのスケッチ帖を見れば草花や虫、鳥等の姿をいかに徹底的に正確に写し取るかという情熱が一貫して続いていたことがわかる。この伝統は近代になっても失われていない。現在京都国立美術館で開催中の小林古径展は、近代日本画の歴史のなかにそびえたつ巨匠の一人古径(1883-1957)の全貌(ぜんぼうを伝える優れた試みだが、そこに修行時代のスケッチブックがあわせて公開されていることは貴重である。闘草(くさあわせ)の画面に散らされている草花が、何気ないようでいて実は厳しい観察と訓練に基づくものであることが、よくわかる。それこそが日本の美の伝統の本質であろう。

'05.8.3.朝日新聞高階秀爾様

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