散歩道<5217> 
      
                      インタビユー・オピニオン・音楽にできること(5)                      (1)〜(5)続く 
                          敵でなく人として 好奇心と知恵を集め 次世代へ伝える          
    

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・・・ワーグナーをイスラエルで演奏したのも、芸術をホローコーストという歴史的脈絡から解放したいという思いからだったのですか。
  「世間ではそのように言われますが、私の方にそういう意図があったわけではありません。もともと現地の音楽祭から、ワグナーを振ってくれといわれていたのです。しかしその後、ワグナーをやるなら補助金をカットすると、イスラエル政府から音楽祭に圧力がかかった。まあ、そういう意味ではワグナーは、ドイツだけではなくイスラエルからも、政治的に利用されているといわざるをえないのですが」
・・・演奏会の前に、聴衆と議論をしたそうですが。
  「それは聴衆が、ワグナーをやると思ってこ日のチケットを買っていたから。テルアビブに住んるせいで大好きなワグナーを滅多に聞くことができず、この日を1年前から楽しみにしていた人が居るかもしれない。だから、どうすればいいか聴衆に尋ねるべきだと思った。英雄じみた話でも何でもありません。私は、音楽家という人間がやるべきことをしただけなのです」
・・・今も請われれば、イスラエルでワーグナーをやりますか。
  「私は、音楽を聴きたい人々が、理不尽な圧力で聴けなくなる状況を認めたくないのです。『ニーベルングの指輪』に関しては、私が監督を務めるベルリンとミラノ、双方の歌劇場の共同制作が進んでいます。ワグナーはもはや、世界普遍の響きです。しかし、ナチス時代の思い出と直結しているという人にワグナーを押し付けるつもりはありません。私は、ホローコーストから生き延びた人々に対し、大きな敬意を抱いています。私は音楽を利用し、何らかの政治的合意を達成しようとしているわけでも、争う者同士を結び付けようとしているわけでもありません。『敵』とみなしている者同士を、まずは『人間』として向き合わせる。そのための素朴な試みに、音楽の可能性を賭けたいのです」


'13.1.8.朝日新聞指揮者・ピアニスト・ダニエル・バレンボイムさん

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