散歩道<5216> 

      
                          インタビユー・オピニオン・音楽にできること(4)                      (1)〜(5)続く 
                              敵でなく人として 好奇心と知恵を集め 次世代へ伝える 
                           

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  「私はいま、ほかのどの一般教育よりも音楽教育が大切だと考えています。私たちはバッハやモーツアルトら、大作曲家の響きに自然の真理を見出し、その構造に複雑な世界を理解します。音は消えても音楽は聴く人の主観に深く刻印され、その人間の精神の根幹を形作るのです」
西欧圏以外でも、若手を育てる「*1エル・システマ」などの試みが相次いでいます。
   「若さは確かに希望ですが、いまこの時代に、そこだけに希望を託すのは楽天的に過ぎます。大切なのは音楽を通じて社会を、他者を知ること。それを子どもたちに教えること。芸術は、人間が社会で生きてゆくための知恵の集積です。社会の一部にならねば芸術は行き続けて行くことはできない。そして、芸術が生き残らなればいけないということは、私が言うまでもありません」
・・・グロバリズムは、異なる文化や民族同士の非寛容を解決する糸口になりえますか。
 「いまどき、ブエノスアイレス生まれの私がミラノ・スカラ座の音楽監督をやるのは邪道だ、タンゴだけ振ってろ、などと言う人はいないでしょう。ドイツ音楽を誰よりも素晴らしく弾いたピアニストはチリ生まれのクラウディオ・アラウだったし、小澤征爾もインド人のズービン・メーターもウィ−ンの舞台に立っている。真にグローバルな世界とは、あらゆる人が他者の文化に関心を持っている世界のこと。人間の感情で最も大切なものは好奇心であり、好奇心こそが立場の異なる人との出会いのきっかけになるのです」

'13.1.8.朝日新聞指揮者・ピアニスト・ダニエル・バレンボイムさん

備考:*1エル・システム:音楽家で経済学者でもあるホセ・アントニオ・アブレウ氏らが、75年に南米ベネズエラで始めた無料の青少年向けクラシック音楽教育システム。79年に運営母体の全国青少年オーケストラも国立財団(FESNOJIV)ができ、今では全国で300近い支部(ヌクレオ)を抱える。幼児や青少年ら35万人が学ぶ。オーケストラは各支部に組織され、最高峰がシモン・ボリバル・ユース・オーケストラ。若手の俊英指揮者グスタボ・ドゥダメルらを育てた。

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