散歩道<5215> 
      
                      インタビユー・オピニオン・音楽にできること(3)                      (1)〜(5)続く 
                           
ひとつの音のため 他者の言葉を聞く 調和を築く力に         
     
 
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・・パレスチナ自治区ガザにおけるイスラエルとの対立が、多くの犠牲を生み続けています。
  「まず、93年に政治解決を試みたオスロ合意は完全に誤りでした。中東問題の本質は政治ではなく、人間そのものの対立です。ふたつの民族が、地球上のほんの小さな土地に対し、自分たちこそがそこに住む権利を持っていると主張する。双方が、その権利を絶対のものだと信じている。そこに政治的、軍事的解決の可能性などありえないのです」
  「ただ、悲観的になるのも間違いです。いずれにもこの地に住む権利がある。そう認め合い、スタート地点に立てる可能性はあります。パレスチナ系のサイードとイスラエル人の私の対話は、その希望の縮図だったのかもしれません。私たちは簡単に分かり合おうとせず、異なる意見を交わすことそのもを楽しむことにしたのです。敵対する地域に生まれた私たちの、一体何が違うのか。違いを知ること、ノーということ。そこから全てが始まるのだと私たちは信じた。相手がなぜ自分と同じ権利を主張するのかに関心を持ち、話を聴く態度を持つことがすべての一歩であり、その一歩をきずく力になれるのが音楽なのだ、と」
・・・しかし、そうした努力が続いているにもかかわらず、民族の違いに端を発した対立は各地で深まる一方です。真の問題解決のためには、政治の場での発言も必要なのでは。
  「それは違います。音楽は音楽以外の目的に利用されてはならない。音楽こそが、あらゆる異分子を調和へと導く希望の礎です。音楽家は政治に何の貢献もできないが、好奇心の欠如という病に向き合うことはできる。好奇心を持つということは、他者の言葉を聞く耳を持つということ。相手の話を聴く姿勢を失っているのが今日のあらゆる政治的な対立の要因です。イスラエルもパレスチナもそれ以外の大国も、己の無知と好奇心のなさをいまだに恥じようとしない。だから対話が進まない」
'13.1.8.朝日新聞指揮者・ピアニスト・ダニエル・バレンボイムさん

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