散歩道<5199>

                             文章・きれいな文章('13.3.23.天声人語)

 先日、偶々、読んだ'13.3.23「天声人語」に大変きれいな文章であるとおもった。読んだ感想は、文章に書かれた花からいい香りが届くように感じたものである。その文章を紹介しよう。

 北の先住民の中には、雪の色をいくつかに言い分ける人々がいるそうだ。豊かな氷雪の文化は、白さえも「薄切り」にしてしまう。ならば、日本人の目が利く色はどのあたりだろう。春の花に振り分けられる、白から赤にかけての一帯とにらんだ
 
まずは紅白の両端を梅が固め、間を椿(つばき)や桃が埋める。そして今、南の花道から現れた桜前線が舞台の真中にどっかと座り、北上の間合いを計っている。赤と白の間には、灰桜、撫子(なでしこ)、珊瑚(さんご)色、薄紅梅(うすこうばい)など、和色の名が目白押しだ
 
きのうの朝、近所の庭木でウグイスを聴いた。気象庁が発表した通り、桜並木はほぼ満開である。関東までの開花がいつになく早いのは、冬がきっちり寒く、春がしっかり暖かいためらしい。気温のめりはりが、桜を揺り起こす
 
本来めでたい花だが、明るく咲きながら、せかせるように散る様が、かっては兵士と重ねられた。同じ営みがあの春以来、改めて鎮魂の色を帯びる。人と苦楽を共にしてきたこの花木に、私たちはもろもろを託す
 
▼ <目を閉じて、ありったけのピンク色を思い出してみる>。小欄を任されて間もなく、母の日にそう書き出したことがある。<ありがとうは、何色(なにいろ)でもいい>と。移ろう季節に寄り添い、はや七つ目の春。思い浮かぶ花色はずいぶん増えた
 
▼<どんみりと桜に午後(ひる)の日影かな>惟然(いぜん)。 「ありがとう」がよく似合う花の下、今年も浮かれる人がいて、祈る人がいる。淡くかすんで、桜色としか言いようのない花の下で。

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