散歩道<5155>
インタビユー・オピニオン・科学者が信頼されない国(2) (1)〜(6)続く
危機に先頭に出ず 責任感も不十分 社会にとって不幸
科学者や技術者への信頼が損なわれるきっかけとなった、東京電力福島第一原子力発電所のj事故から間もなく2年になる。信頼回復には道遠く。専門家への不信感もぬぐえていない。科学技術行政の現場から大学に転じた有本建男さんは「科学者や専門家が信頼されない社会は不幸だ」という。どう立て直すのか、今後の課題を聞いた。
・・・それが、専門家そのものへの不信につながっています。
「日々の生活から、環境・エネルギー問題、そして経済や外交に至るまで、社会活動の全般にわたって、科学技術は大きな影響を与えています。さまざまな政策決定に、専門知識を持った科学者や技術者の役割りは本来、不可欠なはずです。彼らが信頼されず、原子力規制委員会の人事をめぐる議論でもあったように。ともすれば排除の風潮すらあることは、社会にとって不幸であることは勿論、日本という国自体が海外から『信頼できない国』とみなされるのではないか、と心配しています。科学技術の基盤とそれを支える思想がしっかりしていることは、一国の社会と経済が安定的に展開していくための重要な要素とみなされているからです。日本の現在の状況には海外の関心も高く、これからどうなるのかとよく尋ねられます」
「市民からの科学不信に接するなかで、日本における科学や技術のあり方が根本的な変革を迫られていることを痛感しています。信頼を回復するのは険しい道ですが、地道にたて直していかなければ」
・・・どうすればよいと。
「まず、科学者とその集団の思考の枠組みや価値観を変えることです。相変わらず『論文か死か(publish
or perish)』という旧い価値観にとらわれている研究者が多い。
社会や学問体系の中での自分たちの位置を明確に意識し、公共、公益についての深い思考が求められます。そうした研究者を育てるには、評価の仕組みを変え、研究プロジェクト予算の一部は、社会とのコミュニケーションや社会への影響評価などに充てるよう義務付けることも必要でしょう。研究者は研究だけしていればいい、というわけではないのです」
'13.1.24.朝日新聞・政策研究大学院大学教授・有本建男さん
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