散歩道<5133>
インタビユー・オピニオン・ナショナリズムを考える (4)
(1)〜(5)続く
国家が続く確信が 偏見を乗り越え 未来への行動生む
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・・・戦後日本では、ナショナリズムをやっかいなものだと考え、遠ざけて考えないようにしてきました。
「本来、ナショナリズムは未来志向なんです。考えてみてください。私たちはなぜ税金を払うのか。それは、例えば公園や美術館を維持する為だと考えて納得します。その前提となるのは、国家は将来も存続し続け、自分の孫や子たちもきっとこの国で行き続けるという揺るぎない確信です。私たちは、国家があるからこそ、未来の為、まだ生まれもしていない子たちのために行動することができる」
「米国の例をあげましょう1960年代に黒人解放運動が盛んになりました。その潮流はフェミニズムや同性愛者の権利擁護にもつながる。その際に大きな役割りを果たしたのが実はナショナリズムなのです」
「私が言いたいのはこういうことです。黒人の権利、同性愛者の権利を認めるとき、人々は『彼等だって同じ米国人なんだから、同じに扱わなければ」と考えたはずです。国家という概念が、こんな考え方を可能にする、ナショナリズムは、人種偏見や性差別を乗り越えるのです」
「一方で、排外的な人種主義、民族主義は、過去にとらわれる思考です。旧ユーゴスラビアの分裂は、その好例でしょう。クロアチア人、セルビア人らは第2次大戦前から一つの国家として共に暮らしていたにもかかわらず、過去に拘泥して悲惨な内戦を戦い、『民族浄化』すら起きた。過去に目を向けるという点では、中国で清朝時代を美化したドラマに人気が集まっていることも気がかりです」
・・・日本でも中国でも、インターネットが排外主義的なナショナリズムをあおっている面がありますが。
「ネット上には差別を助長するような内容の情報が漂っています。米国ではオバマ大統領は実はイスラム教徒だとか、日本でも嫌韓、嫌中などの情報が真偽もあいまいなままあふれています」
「人は自分が信じたいものを信じるものです。ネットでは、自分のお気に入りのリンクだけ見ていれば、他のニュースは見ずに過ごすことができる。政治、経済、国際などのニュースが一つになっている新聞とは正反対のメディアです。『リンクの世界』では24時間。、特定の情報にだけ接して過ごすことが出来るし、グーグルで検索すれば何も覚える必要がない。コンピューターの前に座るだけの生活はもうやめたほうがいいと若者*1たちに言いたい」
'12.11.13.朝日新聞・国民と国家について考える ベネディクト・アンダーソンさん
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