散歩道<5132>
インタビユー・オピニオン・ナショナリズムを考える (3)
(1)〜(5)続く
本来は社会つなぐ 欠かせない接着剤 差別的思想とは別
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・・・日本では、ナショナリズムとは鬼門です。明治以降、国家の名の下に植民地政策を推し進め、最後に破局が訪れました。
「ナショナリズムそのものが悪なのではありません。それは、いわば社会の接着剤であり、人々に『自分は日本人だ』と感じさせるものです。決して石原さんの威勢のいい演説が示しているようなものではない。そして、この当たり前の感覚が崩れるとしたら、それは社会の危機を意味します。まるでマラリアなどの病気にかかったときのように、すべての悪い症状が一気に吹き出てくるでしょう」
「『上からのナショナリズム』を考えて見ましょう。戦前の日本や、領土欲を隠そうとしない今の中国は、上からのナショナリズムに分類させるでしょう。一方で、過去に東南アジアなどにおいて起きたナショナリズムの勃興は、植民地支配からの独立を促し、抑圧された人々を解放する役割りを果たした」
「中国を例にすると、共産主義が事実上、過去のものとなり、中国共産党はいま、国家を統治し続ける根拠を問われています。経済成長は、その理由のひとつでしたが、右肩上がりも続かない。今まで、政府はうまくナショナリズムをはけ口にすることに成功してきましたが、いずれ袋小路に陥ります」
「他の国と同様、中国でも人々は自分と子どもの未来を考え、どう生きて行くべきかを考えます。一党独裁で言論の自由もないような政治体制でいいいのか。私たちは何をすべきなのか。こんな問いを抱かせない為に、国家が民衆に暴動を起こすことを認めているのだと思います」
「そんな人々は容易に抵抗者へと変わりうるでしょう。だから政府はすぐに抑圧します。下からのナショナリズムは、体制をひっくり返すことがある。ベネズエラのチャベス大統領の行動や、イランのイスラム革命にも、そんな側面がありました」
'12.11.13.朝日新聞・国民と国家について考える ベネディクト・アンダーソンさん
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