散歩道<5110>
                       総選挙・インタビユー・オピニオン・荒瀬ダムから考える   
                       人口減少に直面し 巨大事業の転換点 「壊すルール」必要(3)           (1)〜(5)続く

 日本3大急流のひとつに数えられる熊本県の球麿川。林業が盛んだった土地らしく深い緑に包まれている。その中流にある荒瀬ダムで9月、全国初となる大規模ダムの撤去工事が始まった。人口が減り始めたこの国に、ふさわしい公共事業のあり方とは。公共事業研究の第一人者、五十嵐 敬喜さんと「廃ダム」の現状を歩いて考えた

・・・・五十嵐さんは菅直人首相時代の内閣官房参与です。中枢から公共事業を変えられなかったのですか。
  「何もできずに申しわけないと思っています。市民の集会に行くと、『共犯だ』とやじられます。政権内部で公共事業基本法の制定や少子高齢化社会の新たな都市・農村の姿、そして国土のあり方を検討しようと決意したのですが、就任3日目に東日本大震災が起きてしまった」
  「私は家を失った人への対応にあたりました。仮設住宅はいずれ撤去するので、大量のがれきを生む。寒い避難所で仮設住宅ができるのを待つだけでなく、被災者に素早くお金を渡す選択肢を増やせないか、と考えました。仮設住宅の建設には1戸300万円、撤去には100万円かかるわけですが、同じ費用を被災者がとりあえず自由に使えれば、復興の道筋も見えてくる。何よりも自力。自治の活力が出る。しかし国土交通省は『厚生労働省の管轄』。厚労省は『前例がない』という。財務相は『国民の税金を個人に使うわけにはいかない』。首相は国会やマスコミから『早く仮設を造れ』と責められる。国を動かそうとすると、一事が万事そういう具合になる」
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・・・・公共事業ひとつをとっても、霞ヶ関の壁を越えられなかったということですか。政治主導を実現する具体案はありますか。
 「国民の『政治参加』がキーワードになると考えています。自治体では、住民が無駄な公共事業について監査請求する権利が認められている。これと同じように、国に対し不当な支出を監査請求できる権限を与えるべきです。国民の声を直接届けられるようにすれば、被災地と関係ない事業に復興予算をばらまくような、むちゃな公共事業は消えます」
 「注意しておきたいのは、官僚が勝手に復興予算をばらまいたわけではなく、復興基本法に基づいた、ある意味で合法な支出とも言えなくはない。それを可能にしている国会にこそ重大な責任がある。ばらまきがばれたあと、国会があわてて厳重に注意する姿は、漫画チックです」

'12.12.6.朝日新聞・法政大教授・五十嵐 敬喜さん 
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