散歩道<5105>
                              総選挙・インタビユー・オピニオン
  
                                反TPPの核心(3)                             (1)〜(5)続く  

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・・・コメが典型ですが、国内市場に閉じこもってきた日本の農業は縮小しつづけています。成長のない産業や市場は持続可能なものですか。
  「農政の失敗もあるが、一番の理由は日本人がコメを食べなくなったことです。日本の農業を米豪のように大規模農業で国際商品として成功させるのは難しい。世界は食料戦争の様相を呈してくるでしょうから、もっとも大事なのは自給率をあげ安定した供給を確保することです」
・・・中国で日本の高いコメを買ってくれる富裕層が急増しています。貿易自由化を進めればコメも輸出できる。有望市場が隣にあるのになぜチャンスを生かさないのでしょう。
  「同時に中国から安価な食料品も入ってきます。時に粗悪なものも来るでしょう。いずれにしても中国市場への過度な依存は、逆に中国経済がクラッシュした時に大変な影響を受けてしまう。中国の将来は不安定で日中関係も波乱含みです。過度な中国依存はリスクが高すぎますよ」 
・・・戦後の自由貿易体制は各国の保護主義が世界大戦へと暗転した反省から生まれました。国家間の対立を緩和し、関係を深化させる「自由貿易の効能」をどう考えますか。
  「一般的には保護貿易が大恐慌をひどくしたといわれるが、それは正しくありません。むしろ19世紀から20世紀初頭には、過度な自由競争やグロバリズムによって資本の争奪戦が起きました。それが帝国主義につながり、やがて大戦を引き起こした。その方が危険なのです。1930年代の大不況の直接の原因は保護主義ではなく、20年代の金融グローバル化のなかで生じたバブルです。それが崩壊して大恐慌になった」
  「だから閉鎖経済をつくれと言いたいわけではない。今日の世界も金融の過度なグローバル化が進み、投資資本が国内経済を撹乱している状態で、自由貿易が双方の利益にはならない。世界経済が底上げしている間はいいが、やがて条件は崩れる。資源の制約もある。中国、インドなど人口大国が高成長を続ければいずれ行き詰まる。その後に出てくるのは市場や資源を巡る帝国主義、激しい国家間対立です。そうなる前にグローバル競争を抑えないと」
・・・フランスの歴史学者エマニュエル・ドッドが言うように「グローバル経済のレベルを落とせ」と。
  「そうです。世界全体が意図的に。ただ、一気にやるのは難しいから、少しずつもって行くしかない・自由貿易のイデオロギーにとらわれず、みんながもう少し『内向き』になった方がいい。欧州はそう考えはじめたように見えます
'12.12.1.朝日新聞・京都大教授・佐伯啓思さん
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