散歩道<5063>
まなあさ・ さあ、知の世界へ
まねで終わらず創造を(2) (1)〜(2)続く
有機化合物を合成する「クロスカップリング」という反応に付いて、効率的で安定した方法を開発したことを認められ、私は2010年にノーベル化学賞をいただきました。授賞式では、スウェーデン国王からメダルや賞状を授与されました。有機化学の研究で人の役に立ちたいとは、以前から思っていました。でも当初は、私の研究は、企業に見向きもされませんでした。それが、今では血圧を下げる薬や抗がん剤といった医薬品、液晶や発光ダイオードの製造などにも「鈴木カップリング」の技術が使われています。これだけみなさんが使ってくださるとは、予想もしていませんでした。
「いい方法を見つけたい」という一心でした。特許を取っていないので、どんな会社が使ってもタダです。研究者仲間からは「もし特許をとっていたら、いまごろ百万長者だな」と言われます。でも、そのおかげでノーベル賞をもらえたのですから、私は非常にラッキーでした。
日本は資源のない国です。原油も石炭も、ほとんど輸入している。資源小国が生き残るためには、付加価値の高い物を作るしかない。他国にはまねできない、技術力の高い物を。
「なぜ理科を学ぶのか」と、問われることがありますが、そうしたものを生み出すためにぜひ理科を学んで欲しいと思います。
'12.8.13.朝日新聞・ノーベル賞化学者・鈴木 章氏
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