散歩道<5057>

                               耕論・転職を望まない若者(1)          
                                江戸時代から続く国民性(2)                     (1)〜(2)続く

 中国は1千年の宋の時代に身分制を撤廃し、科拳という実力主義を導入し、職業選択も自由にしました。勝ち組と負け組みに分かれるけれど、競争が激しくて今日の勝ち組は明日も続くとは限らないから、悔しかったら再チャレンジしてね、という形で納得してもらった。
 社会の流動性を極端に高めて,今の新自由主義に近い原理の競争社会に変えた。これを私は「中国化」とよんでいます。
 しかし日本は江戸時代、身分制を維持し、家と土地と職業をワンセットにして、むしろ流動性を低めた。決った土地で先祖代々の家業をつながなければならない分、最低限の生活は保障する仕組みで納得させたのです。戦後の日本型雇用も、「転職はしにくいけれど、定年まで雇ってもらえ、家族を養える」という意味で、この延長戦上にあったといえます。
 しかし今は、長期不況で非正規雇用が広がり、いわば日本社会も「中国化」しつつある。にもかかわらず、多くの若者が江戸時代的な、不自由でも安定した人生を望んでいる。このギャップは危険だと思います。社会に欲求不満がたまりますから。
 いま問題になっている生活保護批判など、他人が得ている安定を「特権」視して、たたくバッシングが典型です。終身雇用が続いている公務員や、逆に最初から日本人とは異なる生き方をしてきた民族的マイノリティーも、対象にされがち。でも、互いに蹴落とし、憎しみ合う関係からは、みんなが暮らせる新しいモデルは生まれません。それだけは、やめましょう。

'12.6.12.朝日新聞・愛知県立大准教授・與那覇(よなは) 潤さん

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経気台・お化けする駐在員、