散歩道<5055>                 
                            グルーグマン・コラム・銀行救済
                                 
金融緩和で労働者も救え(4)
                 (1)〜(4)続く

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 以上を全て考え合わせると、欧州の政策エリートがどういう人たちか分かるだろう。銀行保護ならいつでもさっと行う用意があるが、それ以外、経済が支えるべき人々を見捨てていることなど全く認めようとしないのだ。
 米国は随分ましなんだろうか?米国の短期見通しは欧州ほど悲惨ではない。だが、連邦準備理事会(FRB)自身の見通しでは、これから数年間は低インフレと非常に高い失業率が予想されている。これはまさにFRBがすぐに景気刺激策を取るべき状況だ。しかし、FRBは動こうとしない。
 人的・経済的惨事が進んでいるにもかかわらずこのように欧米がマヒ状態であることは、どう説明したらいいのか? その一部には間違いなく政治がある。FRB高官は「いかなる景気浮揚策もオバマ支援に手を差し伸べたと見られるだろう」という警告によって明らかにおじけづいている。それから、経済的な痛みはどうにか埋め合わせできるものだというメンタリティも一因だ。これは「サド・マネタリズム」と呼ばれたことがある。
 このマヒ状態の根幹に何があろうと、ますます明白になってきているのは、壊滅的な出来事でも起きなければ、銀行救済にとどまらない何らかの政治的処置が現実に取られることはないだろうということだ。だが、絶望している場合ではない。特に欧州で現在の状況が続けば、壊滅的な出来事はすぐ起きるかも知れないのだから。


'12.5.14.朝日新聞・米プリンストン大教授・クルーグマン

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