散歩道<5044>
仕事力・自分は何を幸せと考えるか(2) (1)〜(4)続く
望みには、早く踏み出そう
人のせいにしてしまうその前に動く
演劇の仕事でもオーディションをよくやりますが、今までにお芝居の経験が全くない30歳くらいの女性が受けにきたりします、「高校の時にやろうと思ったら親に止められた、大学卒業した時にもやはり止められた、30歳になってやっとやりたいと決意してここへこられました」と。
それは偉いことだけど、でも自分でも自分の声や体を張って演技するお芝居には、ピアノやバイオリンと同じように繰り返して練習し、悩み、身につけた技術が必要です。何ごとも遅すぎるとい言うことはないとはいえ、30際過ぎてプロのピアニストになるのと同じくらい不利なスタートではある。だから、やりたい事をくすぶらせたまま時間を浪費にない方がいい。
以前はどんな仕事にも少なくても3年はその場で頑張れと言われましたが、この動きの速い時代なら、僕は1年でも構わないと思う。自分にとってこの居場所はどうなのか、試してみるべきです。本当にやりたかったのに、親や周囲に止められたからその道へ進めなかったと思っていたら、5年後、10年後には止められた人を恨むようになります。それは幸せな時間ではないのです。
あなたの熱意は本物だったか
わが子の望みを止めた親は、その瞬間瞬間に子供の将来を考えてアドバイスをしただけだと思っています。深く恨むようになる子もいれば、もちろん、あっさりと忘れる子供もいる。それは、やめた方がいいといわれて、「そうかもしれない」と思ってしまうぐらいの熱意しか子供にはなかった場合です。諦めるための苦しみの量が判断の基準です。あるいは、いわゆる自由業、フリーランスという仕事は不安で選べないと本人が結論づけたのかも知れない。どちらも自分の判断だから「あり」です。
仕事は自由に選べる時代になった。でも、やりたい仕事が分からないと悩む人もいれば、やりたい事を止められたという人もいる。それなら少し時間がかかっても、面倒なことがあっても、自分はどうしたいのか、行きつ戻りつ気持ちと相談するしかない。あなたはそういう時代を生きているわけですね。
考え、迷っているばかりで答えが出ないなら、この辺りはどうかという場へ自分の体を持っていく。それは、具体的な体験をしてみると感じ取れる事があるからです。
僕が仕事をしている演技の世界は、入ってきたからといって稼げるかどうかは分からないし、仕事があるかどうかも分からない。本業の俳優業を続けるためにアルバイトで食いつなぐことも普通です。それでも演じることが自分のチョイスなら、いい仕事と言える。どんな仕事でもあなたとの相談です。
'12.11.4.〜25.朝日新聞・作家・小説家・鴻上 尚史(こうかみしょうじ)さん