散歩道<5042>                                             
                          仕事力・「感じ、考え、動く人になろう」
(4)                  (1)〜(4)続く
                         遠回りも寄り道も、力になる
    
手堅い人生の台本がなくても怖くはない
 日本人を萎縮させてしまう偏差値というものを厄介なものとだと僕は思っていますが、若い人には何とかそこから抜け出して欲しい。ペーパーテストで決められてきた「あなたは大体この程度の実力」という基準を自分の仕事や人生にあてはめるような愚を犯してはならないですよね。
 大学受験のころ、僕は愛知県の地方都市の高校に通っていました。東京の名だたる私立大学には引っかかりもしない偏差値でした。でも、希望高には有名大学名を書き連ね、教師、父親を交えての三者面談では担当教師から「お前、寝ぼけちゃダメだぞ。受かるか、そんな所!」と、頭ごなしに否定されました。その時、平凡に生きるのが一番だと地道に暮らしてきた父が、思いがけなく「この子のやりたいようにやらせる」と言ってくれた。うれしかったですね。
 可能性を信じてもらえると、人間は本来の力がでる。僕は、希望校合格は無理だと言われながらも、雨戸を閉め切って陽が入らないようにし、昼夜集中してちゃんと勉強しました。自分ができることをやるためなら本気になれたのです。周囲が決め付けてくるという言い訳は横に置いて、まずあなた自身が自分の望みを本気で信じてください。そこにはもう可能性が生まれています。人と比べることはない。予定通りでなくていい。なぜなら、自分の声を聞いて生きることが、最も強い力を引き出すからです。

誰でも永遠に成長過程
 
たまたま幾つかの世界規模企業で仕事をしてきましたが、その会社の志は創業者ものです。ウォルト・ディズニーやスティブ・ジョブズになれるわけもなく、僕は前刀禎明でしかない。幾つもの失敗も経験してきました。取引先の経営破綻(はたん)により、起業した会社が民事再生に追い込まれたり、波瀾万丈(はらんばんじょう)と言えばそうかもしれません。しかし、僕のイメージの中でこの波瀾万丈の波は、右肩上がりの波です。気持ちはいつも自分の可能性に向っていて、遠回りや寄り道もありますが、それもまた、いい経験と受け止めています。映画監督で俳優のチャールズ・チャプリンが、代表作は何かと問われ、「Next One(次の作品)」と答えた。僕はその答えにとても共感します。
 言い換えれば、明日の自分の仕事を信じているってことですね。
 僕のように自分の体験や考え方を通して「可能性」について発言すると、しらけた感覚を持つ人がいるかもしれません。でも、僕が特殊だったわけでも幸運だったわけでもなく、「できるかもしれない」と気持ちで動いただけのことです。そして、皆さんにそうお伝えするからには、僕も歩みを止めない。「明日の自分には無限の可能性がある」。そう信じることで、仕事の力を手にしていけるのだと思います。

'12.10.7.〜28.朝日新聞
リアルディア代表取締役社長・前刀 禎明(さきとうよしあき)さん

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