散歩道<4999>
経済気象台(716)・イノベーションの宝庫
ユニクロのインナー商品ヒ−トテックは、今冬、世界で1億枚が販売される見込みとのことだ。この商品は、「世の中に存在しないものを」というコンセプトで作りだされた。つまり保温性ばかりでなく、肌着自体が温かくなるという新しい着想を持ち込んだ。
冬の肌着は、どうしても厚手になりがちだ。発熱肌着の発想は、「マニアックで効果だ」という消費者の生の声を聞いたことに始まったという。やりようによっては大きな市場を切り開けると確信し、素材開発メーカーを巻き込んで、妥協のない商品開発を進めて完成させた。この開発過程が一編の物語だ。
ヒ−トテックの主力商品の素材は4種類の線維でできている。レーヨンは吸湿・発熱効果があり、アクリルは保温性が高い。ポリエステルは吸水速乾性にすぐれ、ポリウレタンは伸縮性によるフイット力を担う。
これらの特性は、改良されているものの、実はよく知られている。効果的に組み合わせ、かつ薄地化の工夫で、従来とは一線を画する新素材、新商品が生み出された点に注目したい。 また、この素材を提供しているメーカーは、原料供給にとどまらず、生地にした後で加工を施し、縫製までを一貫して手がけている。線維産業特有の多段階の分断構造をも打破することで、収益率の向上につなげている。
製造小売業と、線維素材メーカーがチームを組み、新しい市場と価値を創造した。このシュンペーターのいうイノベーション(革新)の典型例がいくつもある。自前主義からの脱却、新用途、新市場の開拓をめざす企業にとって格好の研究対象ではなかろうか。 '12.3.8.朝日新聞
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備考:この話の面白さは、個々のものにも革新の具体策はあるものの、その考えを組み合わされることにより数倍もの新たな改革されたものが出来た(出現した)という話である。