散歩道<4987>

                               耕論・オピニオン緊迫する日中(2)                         (1)〜(3)続く
                                     
共に成長する道筋見つめ直せ

■ ■  経済交流も岐路

  経済の基本は、双方が勝者となる「ウィン・ウィン」の関係です。だから短期間には打撃を受けても復元力がある。これまでの日中関係は、どんなに政治が冷え込んでも経済交流交流は活気がある「政冷経熱」にとどまっていましたが、暴動や不買運動が「年中行事化」すると、経済の復元力さえ損なわれてしまう。いま、両国は岐路に立っています。
 万一、尖閣列島海域で銃火を交え、死傷者がでるようなことになったら、中国本土では抗議行動が制御不能になる恐れがあります。邦人の身に被害が及ばないという保証はないのです。生命・身体の危険となったら、企業ではとても対応できない。進出企業の撤退や事業譲渡もあり得ます。
 領土・領海問題は容易に戦争につながります。絵空事ではありません。両国には、いかに危険な綱渡りをしているのかを重々自覚して頂きたいのです。「爆弾の信管」を早く外してほしい。 いまの中国は領土・領海問題を「核心的利益」と位置づけています。決して譲歩も妥協もしない立場です。裏には、侵略を受けた過去の「歴史トラウマ」があり、今回の事件でさらに、かたくなになってしまったようです。
 日本政府が尖閣国有化を表明したことで「それならば中国も実効支配に乗り出す」というモードに入ってしまいました。中国も自らの退路を断ったようなものです。
 両国の経済関係が損なわれたら、中国は最大の貿易相手とする日本経済は苦境に陥ります。中国もまた、海外からの投資が細るなど、失うものが大きい。
 中国はリーマン・ショック後の大型投資の反動や欧州危機の影響を受け、経済が急減速しています。2桁の高度経済成長にも終りが来ました。今回の騒ぎによって経済問題はいっとき忘れ割れていますが、厳しい現実は何も変わっていないのです
 反日デモが起きてから、香港に行きました。そこであった中国人ビジネスマンは恨み言を言っていましたよ。「コレでまた経済改革が遅れてしまう」と。ナショナリズムが高まる状況下で保守派の発言力が強まり、思い切った国有セクターのスリム化や市場開放を推し進めることは厳しくなった、という読みです。
 その不安が的中するかどうかはわかりません。近く発足する新体制が早期に「習イニシアチブ」と呼べるような経済政策を打ち出すことができるのかも、先行きを占う一材料でしょう。

 
'12.9.29.朝日新聞・中国経済コンサルティング会社「津上工作室」代表 津上 俊哉さん

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