散歩道<4971>
オピニオン・インタビユー高度成長とアメリカ
大国意識を捨て多元的なアジアに活路を見いだせ(5)
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・・・・しかし今、領土問題の再熱もあって、日本はアジアと向き合わざるを得なくなっています。
「中国の台頭で地質学的な秩序が変わり、日米の『抱擁』によってフタをしてきた問題が表に出てきています。アジアは再び中国中心の時代に戻るし、アメリカも以前のような覇権は維持できない。アメリカの傘の下にいれば万事OKという時代でないことは多くの日本人がわかっている。でもどうしていいかわからないから、中国けしからん、韓国けしからんと声高々に言うことで、不安を紛らわせているように見えます」
「日本は高度経済成長で良い思いもした。だがその結果、アメリカの支配を受入れ、沖縄に基地が集中し
、狭い列島に一時54基も原発が建ち、事故で放射能がついた雨が降る中、それでもアメリカ製の傘をさすしかない。これは日本人が大事にしてきた高度成長という成功物語の裏面で、自らはまった袋小路です。そして原発事故で、政府や電力会社への不信が高まる一方、迅速な情報収集・支援活動をした米側への信頼が相対的に高まった。やっはり傘はアメリカ製に限るよね、と。そんな日本って、一体何なのでしょか」
「中国はますます大国化し、米中二極構造がはっきりするでしょう。日本は今のままだと他に頼るものがないから、アメリカの傘をさし続けるしかなくなる。アメリカも、使い勝手のいい日本、特に沖縄を簡単には手放さないでしょう。これでは出口がありません」
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・・・・ないですか、出口。
「アジアの中で日本を再定義する必要があります。70年代末から東アジア全体が戦後に入り、やがて経済成長を遂げ、日本の特権はそがれた。日本がアジアの中心だったのは日清戦争以降のたかだか100年。大国マインドをリセットし、ワン・オブ・ゼムであることを自覚すべきです」
「自覚して何が見えてくるか。それは多分、巨大な都市化された群島の集積としての東アジアです。米中二極化という構図の中だけでアジアの将来を考えても、それは帝国主義や冷戦時代の延長でしかない」
「日本には約7千、東アジア一帯には数万もの島がある。面ではなく点と線の集積として東アジアを捉え直せば、もっと多元的な都市秩序の中で交易や連帯が活発化し米国あっての日本という構図も崩れていく。そんなふうにアジアの中で日本という国家を相対化する道があるはずです。大日本帝国からアメリカ覇権への連続性を問い直しつつ、この多元性に賭けてみたい。そこに日本人の活路もあると考えています。
'12.9.4.朝日新聞・東京大教授・吉見俊哉さん
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